約3,000本のモミジが楽しめる滋賀県屈指の紅葉の名所『日吉大社』を徹底ガイド
こんにちは!神社入門ガイドのyoshikiです🌏
今回は、全国に約3,800社余りある日吉・日枝・山王神社の総本宮。
滋賀県大津市の比叡山の麓(ふもと)に鎮座する『日吉大社(ひよしたいしゃ)』について、わかりやすく解説したいと思います。
日吉大社といえば、国の史跡に指定される400,000平方メートルの広大な境内に
約3,000本のモミジやカエデが咲き乱れる滋賀県屈指の紅葉の名所としても人気の神社。
10月下旬から11月下旬かけては、自然の織り成す錦秋が楽しめるパワースポットですから
滋賀県の紅葉スポットをお探しの方は、ぜひ最後までご覧ください。
平安京を守護した厄除けの大社
日吉大社は國の首都であった「平安京(へいあんきょう)」の北東に位置していたため
都を守護する厄除けの大社として国中から崇敬を集めました。
いわゆる、鬼が出入りする不吉な方角を封じる"鬼門封じ"の役割を担っていた神社の一つなんですね。
元々、中国の風水や日本で流行した"陰陽道(おんみょうどう)"の影響により
北東は鬼門・南西は裏鬼門として忌み嫌われていました。
平安京でいえば
など、様々な神社仏閣が鬼門封じに配置されていることで有名ですね。
現在でも厄除けのご利益があるとして、全国的に崇敬を集めています。
とりわけ日吉大社の神の使いである"神猿(まさる)"は「魔が去る・誰よりも勝る」魔除けの象徴と言われ、当地では古来より猿を大切に扱ってきました。
ちなみに楼門を持ち上げている神猿なんかも存在!
"棟持猿(むなもちさる)"と呼ばれ、親しまれています。
写真のように神猿はお守りや絵馬に描かれているだけでなく、境内の至るところに隠れていますからぜひ探してみて下さいね。
大津京を守護する西本宮
日吉大社には、古来より大津京と比叡山を守護する「西本宮」と「東本宮」の二つの本殿が鎮座しています。
西本宮は第38代"天智天皇"が「近江大津宮(大津京)」の鎮護を目的に669年に創建されました。
西本宮のご祭神は
●大己貴神(オオナムチ)
本来は荒神スサノオの七世の孫であり、地上(葦原中国)の国創りを勤め上げた国津神の主宰神"大国主(オオクニヌシ)"の別称です。
しかし、西本宮のご祭神の場合は奈良県最古の神社「大神(おおみわ)神社」の主祭神である"大物主神(オオモノヌシ)"を勧請したものとして伝わっています。
「日本書紀」で大物主は、大国主の和魂(にぎみたま)であるという記述から
恐らく当社では、大物主=大己貴と解釈されたのでしょう。
西本宮のすぐ隣には、本殿とほぼ同じ構造配置の摂社『宇佐宮(うさみや)』があります。
高い床下には大きな岩が露出しており、古来の磐座(いわくら)信仰を伝える貴重な社殿なのかもしれません。
ご祭神は
●田心姫命(タゴリヒメ)
太陽神アマテラスと荒神スサノオの誓約(うけい)によって誕生した「宗像(むなかた)三女神」の長女で、あらゆる道の最高神です。
当社では、大己貴神の妻として祀られていたものと推測されます。
比叡山を守護する東本宮
西本宮からまっすぐ東へ進むと、比叡山の地主神を祀るために創建された「東本宮」があります。
詳しい創建年代はわかっていませんが、その歴史は古墳時代まで遡ると言われており
日本の中でも最古の伝承を持つ神社の一つです。
伝承が正しければ、西本宮が創建される前から当地で信仰を集めていた神社になりますね。
主祭神は
●大山咋神(オオヤマクイ)
大きな山の杭を意味するように「山の所有者」
すなわち比叡山そのものを神格化した神様ということでしょう。
社殿の正面と両側面に庇(ひさし)が付け加えられた特殊な本殿は「日吉造(ひえづくり)」と呼ばれ
東本宮本殿及び、前述した西本宮本殿・宇佐宮本殿でしか拝見することができない社殿形式です。
日吉大社を訪れた際は紅葉だけでなく、社殿形式に注目してみても面白いのではないでしょうか。
東本宮の境内で唯一、違う方角を向いて鎮座する摂社『樹下(じゅけ)神社』
参道を跨ぐ形で本殿と拝殿が配置されている全国的にも珍しい神社です。
ご祭神は
●鴨玉依姫神(タマヨリヒメ)
京都の下鴨(しもがも)神社の主祭神としても知られる初代"神武天皇"の母親であり「神霊を依り憑かせる巫女」
樹下神社の配置は、神体山を拝む形で創られています。
そのことから「東本宮本殿よりもはるか昔から信仰されていた最古の神社は、樹下神社ではないか?」という仮説が立つくらいです。
兎にも角にも、東本宮も西本宮と同じかそれ以上の力を持つパワースポットであることには間違えないでしょう。
琵琶湖が一望できる神体山
東本宮の主祭神"大山咋神(オオヤマクイ)"が降臨したと伝わる神体山も、実は日吉大社の境内から参拝することができます。
神体山のある奥宮は、西本宮から東本宮に向かうまでの急な石段を登った先にそびえる「八王子山」の山頂。
「大山咋神、赤の名の山末之大主神。此の神は近淡海国の日枝の山に坐し」
と「古事記」に示されているように、日吉大社が創建されるはるか昔から
大きな磐座(いわくら)が神様として信仰されていたことが伺えますね。
大山咋神が降臨したと伝わる日吉大社始まりの磐座「金大巌(こがねのおおいわ)」の両サイドには、二つの社殿が立ち並んでいます。
この二つの社殿には、東本宮のご祭神である大山咋神と鴨玉依姫神の荒御魂(荒れ狂う魂)が祀られており
・大山咋神の荒御魂を祀る右側の社殿を「牛尾宮(うしおみや)」
・玉依姫の荒御魂を祀る左側の社殿を「三宮(さんのみや)」と呼びます。
この奥宮に神輿(みこし)が遷され、大山咋神と玉依姫の結婚を再現する「午の神事」の舞台にもなるのです。
ちなみに標高381mにも及ぶ八王子山(奥宮)は、琵琶湖が一望できる隠れた絶景スポット。
その景観は、有料の展望台レベルと言っても過言ではありません。
もちろん、奥宮から見るモミジも非常にキレイです。
本宮の参道より間違えなく人通りも少ないので、ゆっくり紅葉と滋賀の町並みを楽しめるのではないでしょうか?
ただし山頂までの道のりは、斜度60度近くある砂利道をひたすら登らなければなりません。
手すりなんかも備え付けられていませんから
奥宮まで参拝される際は、トレッキングシューズが運動靴をオススメします。
神仏習合を今に伝える山王鳥居
日吉大社一の紅葉スポットである西本宮の鳥居の上には、三角形の破風(はふ)が取り付けられています。
西本宮の鳥居は『山王(さんのう)鳥居』と呼ばれ、山王信仰の象徴として崇敬されてきました。
これは最澄(さいちょう)が天台宗を開いた際、中国の天台山に祀られていた"山王元弼真君(さんのうげんひつしんくん)"にちなみ
日吉社の神を山王権現と称し、比叡山延暦寺の守護神として信仰したことに始まります。
つまり、山王鳥居は平安時代に流行した神仏習合の流れを今に伝える貴重な鳥居ということになるでしょう。
まるで手が合掌しているようにもみえる山王鳥居は、別名"合掌鳥居"とも呼ばれています。
本来は神社の中にも多くの寺院が創建されており
当然、日吉大社の境内にも神宮寺が立てられていました。
明治時代の神仏分離令が発令されると仏像を壊したり、焼き捨てたりする廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)が全国的に広まりをみせますが
その発端は、皮肉にも日吉大社と延暦寺の争いだったといわれています。
当然、日吉大社の奥宮にあった神宮寺も現在は存在していません。
日吉大社の山王鳥居は、廃仏毀釈のような悲劇が二度と起きないように
神道と仏教の"在り方"を後世に示した鳥居なのかもしれません。
日吉三橋と隠れたお祓いスポット
日吉大社の大鳥居を抜けて最初に渡る石橋は『日吉三橋』と呼ばれ、そのすべては天下人"豊臣秀吉"によって寄進されたものと伝わります。
豊臣秀吉は「日吉大神のお告げによって生まれた武将である」という逸話が存在し
もしかしたら日吉三橋の寄進とも関係しているのかもしれません。
秀吉の幼名は"日吉丸"
あだ名が"猿"ですから、この考察もあながち間違っていないのではないでしょうか(笑)
ちなみに日吉三橋は
●大宮橋ー西本宮に繋がる橋
●二宮橋ー東本宮に繋がる橋
●走井橋ー走井祓殿社に繋がる橋
といった感じで、境内の主要スポットへ向かうための重要な役割を果たしています。
西本宮・東本宮と同様に唯一橋が掛けられている末社『走井祓殿(はしりいはらえどの)社』
橋の傍らには清めの泉があり、祭祀に先立って祝詞を唱える祓所として重要視されていた神社です。
ご祭神は
●瀬織津姫(セオリツヒメ)
●速秋津姫(ハヤアキツヒメ)
●気吹戸主(イブキドヌシ)
●速佐須良姫(ハヤサスラヒメ)
以上、四柱の神様。
様々な罪・穢(けが)れを打ち消す「祓戸大神」とも称されます。
重要な祭祀や比叡山の千日回峰行(かいほうぎょう)の際も必ず参拝される日吉大社の隠れたパワースポットです。
他にも400,000mの広大な境内では全国的にみても力のある神様がたくさん祀らえていたり
モミジやカエデをはじめとした多くの自然を鑑賞することができます。
各社殿には、日吉大社ならではの伝承が丁寧に説明書きされているので
神道のことをよく知らない方でもきっと楽しんで頂けるのではないでしょうか。
【参拝時間】9:00〜16:30
【拝観料】300円
【駐車場】無料
※特定日は有料の場合あり
【御朱印】300円
【ご利益】方除け・厄除け
【もみじ祭】2022年11月3日〜11月31日まで
関西の日光と呼ばれる神社
比叡山の東麓に鎮座する『日吉東照宮(ひよしとうしょうぐう)』
東照宮といえば、栃木県日光市に鎮座する「日光東照宮(にっこうとうしょうぐう)」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
日吉東照宮の社殿は、そんな東照宮の雛形として創建されたもので
本殿と拝殿を石の間で繋ぎ、一体化した権現造の発祥といわれています。
日吉東照宮のご祭神は
●徳川家康
●日吉大神
●摩多羅(まだら)神
以上、三柱の神様。
当社の創建は、徳川家康の側近として宗教政策に携わった天台宗の僧"天海(てんかい)"であり
神仏分離令が発令される以前は比叡山延暦寺の管轄下にあったそうです。
実際、摩多羅神は密教における念仏の守護神なので神社に祀られているのは珍しいですね。
日吉東照宮の本殿は、土日祝日限定ではありますが内部拝観も可能です。
日吉大社からは少し歩かなければなりませんが
東照宮のモデルとなった貴重な神社建築を堪能できる隠れた穴場スポットですよ!
モミジやイチョウ、琵琶湖の景観をゆっくり楽しめるビューポイントでもありますから
ぜひ日吉大社と合わせて参拝してみてはいかがでしょうか?